「社員間でレベルの差があるから、社員研修をしてほしい」との顧問先の社長からご依頼をいただきました。
この顧問先ではパートナーとして一緒に取り組み、出前でも、来店でも、売上を伸ばてきました。
売上が伸びれば当然に忙しくなります。
電話応対が雑になったり、作業をしながらお客様に応対するスタッフも出てくるようになり、社長は危機感を持たれていました。
そこで社長はもう一度基本を見直そうと、接客研修をしようとお考えでした。
しかし、この会社では既に何度も接客テクニックの研修はされおり、同じことをやっても意味がありません。
さらに、私は接客専門ではありません。
今までの接客研修は、講義形式とロールプレイングで接客テクニックを学んできています。
何度も同じような内容の研修をしても「何回も同じことするんだよ。わかってるから」と斜に構えるような社員がいては、せっかくの研修も身につきません。
ロールプレイングでは出来ても、現場で出来ないのは、テクニックの問題ではなく、社員・スタッフの仕事に対する意識の問題だろうと考えていました。
そこで、私は「教えない研修」をすることにしました。
教えない研修では、接客のテクニックは一切扱いません。
目的は2つ、仕事に対する意識を上げること、自分で考えることです。
参加者である社員に「どうしたらお客様が喜んでくれる接客ができるか?」
これをテーマに考えてもらいました。
はじめから、大上段に構えすぎた質問だからでしょう、殆ど発言がありません。
これは不味いぞと思い「自分がされたら嫌な接客はどんな接客か?」に質問を変えました。
すると普段他の店でイヤな接客を受けたんでしょう。
ここぞとばかりに意見がたくさん出てきました。
これで、やってはいけない接客の共有認識ができます。
ダメなものがわかると、いい接客も考えやすくなります。
場の雰囲気が暖まったところで、「どうしたらお客様に喜んで頂けるか?」を改めて全員に意見を聞きました。
ここからはいろんな接客のアイデアが出てきました。
非常に活発な発言があって、本音で話し合いができたんです。
これにはオブザーバーで参加していた社長も「こんなに店のことを考えてくれていたんだ。意識は高かったんだ」と感激をしたくらいです。
この研修では、自分の意見が会社に聞いてもらえた、会社に貢献できた、自分は会社や周りの人の役に立っていると、参加した社員は感じていました。
自分はこの会社に必要とされているという自己有用感もアップし、仕事に対する意識も、モチベーションも上がりました。
会社や仲間に期待をされたり、認められたりすると、仕事に誇りをもて、断然やる気になるものです。
役割があって、居場所があるのは幸せな事なのです。
これで、仕事に対する考え方も変わり、接客のレベルが一気にアップしました。
自分たちが考えたことですから、お客様に喜んでもらえるような接客を全員が積極的にするようになりました。
お客様からの評判は非常によくなり、売上も当然前年対比で128%伸びました。
教えない研修を、仕事に直結する内容で開催することで、自ら考え、行動する、仲間と助け合う組織が出来上がっていきます。
指示待ちではやらされ感があって、人は伸びません。
自分で考えるからこそ、進んで行動できます。
そして、人は伸びていきます。