「もっと原価率を下げたいですね」と役員が新メニューの開発をしている時に言いました。他のメンバーもそのことに賛成をしています。
原価率を下げれば、利益率は増えるので、店としては少しでも原価率は下げたくなるのは当然のことです。
しかし、それは「売れる」ことが前提であって、売れなければ原価率など何の意味も持ちません。
商売は「売れてナンボ」ですから、率にこだわりすぎてしまうと、売上に悪影響を及ぼすこともあります。
あくまでも、お客様が価格より商品の価値の方が高いと判断をするからこそ、売上になるわけです。
見た目がよく美味しい商品であれば、原価率が低くても売れていきますし、どんなに原価率を掛けても見た目がよくなければ原価率が高くても売れません。
一律に商品の原価率を揃えることには全く意味はなく、品揃え全体で原価率を考えていけばいいのです。
飲食業にはFL値(フード-材料費・レイバー-人件費)があって、売上高に占めるFL値が60%が一つの目安です。
しかし、店の経営戦略によっては、あえて高原価率で勝負をすることもあります。その結果、売上を大きく伸ばして、儲けている店もあるのも事実です。
反対に原価率を下げたために、売上が下がってしまったケースもあります。
材料費が値上がりして、利益を出すために、材料費を削って原価を抑えたとします。髪の毛1本でも違和感を覚える程敏感な舌には、少し量が減っただけでもそのことを敏感に感じ取ります。特に、いつも食べてくれている常連客にはとてもよくわかります。
すると、大切なお客様からの注文が減ってしまい、原価率は低くなったものの売上が落ちていき、利益額は減ってしまうのです。
これでは、本末転倒です。
同じように、販促費率についても同じようなことが言えます。
安い費用で販促ツールができても、それが売上につながらなければ、いくら安くできたからといっても、売上や利益の足を引っ張るだけです。
しかし、費用は掛かったけれども、お客様の反応がよく売上が大きく伸びたとしたら、売上にも利益にも大きく貢献してくれますし、売上高対販促比率も下がります。
利益率はあくまでも売上高に対してですから、原価率や販促比率を低くしても損益分岐点を超えなければ、意味をなしません。
費用を掛けても、それが売上につながらなければ、無駄遣いになってしまうだけです。
利益を上げるには、売上があってこそです。
利益率ではなく、商売は利益額にこだわっていくべきだと考えます。