「いやー、驚きました」と勢い込んで社長が話し出しました。
「競合店(有名なチェーン店)から注文の電話があって、その店に直接届けに行ったんです」
私自身も初めてのことだったんで「それは珍しいですね。それで・・」と興味津々で尋ねました。
「さすがにアルバイトでなく、社員にデリバリーに行ってもらいました。それでしばらく外で聞き耳を立ててもらったんです」
「それで、それで、どうなったんですか?」とさらに顛末が聞きたくなって続きを催促すると
「『これは凄い。これでは勝てないなぁ』と言った声が店の中から聞こえてきたと社員はうれしそうに言っていましたよ」と社長自身も満更ではないようでした。
競合店調査は、商売をしている以上必須のことですが、ここまで大胆にライバル店に直接商品を届けさせるのを聞いたのは、後にも先にも初めてのことです。
それでも、性根を据えてライバル店の商品を店のスタッフ全員で研究することは競合店ながらあっぱれとしか言いようがありません。
飲食店も、出前・宅配も、お客様が食べる時間が同じである以上、注文がピークを迎える時間もほぼ同じです。
「だから、競合店調査がなかなか出来ない」という店も多いのですが、それは言い訳に過ぎません。
そのくせ、競合店の事を気にしているのは、どう考えてもおかしな事です。
競合店調査はその気になりさえすれば、いかようにも出来ます。
家族に注文してもらう方法もあります、アルバイトやパートさんに頼んで競合店の商品を店まで持ってきてもらってもいいです。
それでもダメなら友人でもいいのですから、競合店調査は絶対にやっておかなければなりません。
出前・宅配では実際に注文してみないとわからないことがたくさんあります。
配達時に商品と一緒にクーポン券や割引券が付いてくることもあります。アンケートならばどんな項目を聞いてくるのかも注文をするからこそわかるのです。
その他にも、どんな容器で、どのように盛りつけしてあるのか、チラシやネットの写真との差はどれくらいあるのか、デリバリースタッフの対応もハッキリします。
このときに、「盛りつけがよくない」「時間が掛かりすぎる」「おいしくない」など競合店の悪いところばかりに目が向いてしまうこともありますが、それでは自店が優れていることを自分自身に納得させることが目的になってしまいます。
競合店調査の本来の目的は「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」という有名な孫子の兵法を実践する事です。
競合店の弱点を知ることも大切ですが、ポイントは「よいところを見る」ことを合わせて行って、はじめて競合店が売れている理由が見えてくるのです。
相手の強みと弱みがわかってこそ、競合店に勝つ戦略が立てられます。
そして、競合店調査は1回で終わらせないことです。
2回3回と続けてこそ、わかることがあります。
電話対応、デリバリースタッフの対応など、担当者が変わった時にどのように変わったかで教育レベルがわかります。
また、既存客に対するアフターフォローやアプローチも、初回~裏を返して~馴染み客になって初めてわかる事も多いのです。
あなたの店では、定期的に競合店調査をして、自店の経営に役立てていますか?