マニュアルの正しい運用とは?

第69回マニュアル

差し入れ用にハンバーガーを40個注文したところ、レジの店員が
「店内でお召し上がりですか、お持ち帰りになりますか」と確認したことに激怒し、「状況判断できないのか!」「今ここですぐ金払うから食ってみろ」と客が詰め寄るのはバラエティー番組の定番なのでしょうか?
あまり気分のいいものではありません。

本当にこのような事実があったのか、番組用のネタなのかはわかりませんが、店員にすればマニュアル通りに対応しただけですから非はありません。

ファストフードのアルバイト店員に状況判断を求めるのは酷であって、状況に応じて対応をしてもらいたかったら、それが出来る高級店に行けばいいのです。

かといって、お客様である以上は店ではそんなことは言えませんから、困ったときには店長や責任者に指示を仰ぐか、対応を変わってもらうのが一番です。

そもそも、マニュアルが存在する第一の目的は、新人を短期間で一定レベルに引き上げるためのものです。

出前・宅配であればお客様との最初の接点は電話です。マニュアルには電話対応の方法が書いてありますから、それに基づいてまずはトレーニングをします。
そして、責任者が「これなら大丈夫」と判断すれば、お客様からの電話を新人に受けさせます。

もしも、マニュアルがなければ、必要事項を聞くことを忘れてしまい、ミスが発生する確率が高くなるため、かえってお客様にご迷惑を掛けてしまいます。

また、電話を受ける人によって対応が違ってしまうのも困りものですから、誰がやっても一定レベルの対応が出来るようにすることがマニュアルの第二の目的であり、業務の標準化のためです。

マニュアルの内容は業務の基本であり、同じ電話対応でも新人はマニュアルを棒読みしているだけかもしれませんが、それでも最低限のレベルは確保出来ます。

はじめはおぼつかなくても、ベテランになればお客様の話すスピードに合わせて会話ができるようにもなり、繰り返しやっているとレベルは上がっていきます。

そして、あるレベルまで達したら、さらにレベルアップした業務内容に移行しますが、そこにもマニュアルは存在します。

初級のマニュアルができるようになったら、中級レベルのマニュアルへ、そして上級レベルのマニュアルへと進んでいきます。

レベルが上がることで自身の能力も向上し、時給も上がっていきますから、アルバイトにとってはマニュアルがモチベーションを上げるツールにもなります。

ですから、マニュアルの第三の目的は、さらなる能力の向上とモチベーションアップのためのものです。

そして、マニュアルに書いてある業務は、繰り返し行うルーティンワークです。
ルーティンワークとは、自動的に会社や店の現場が回るシクミであって、だからこそアルバイトだけでも回せる店ができるのです。

しかし、お客様のクレームは、ルーティンワークではありません。イレギュラーな事態であり、判断業務に属します。
これに対応するのは、時給1000円前後のアルバイトではなく、店長であり、マネジメントをする階層の仕事です。

判断業務とは、イレギュラーな事態に対応できることであり、難易度の高い業務を遂行し、新しいシクミを考える重要な仕事です。

冒頭のような客が来たときには、店長に報告するようなマニュアルが必要ですが、その線引きをすることが判断業務であり、経営幹部の仕事です。

もしも、マニュアルに不備があったとしたら、それをアルバイトが勝手に変えて運用することは許されません。

現場からの声を吸い上げ、問題点を洗い出した上で、マニュアルを改定し作り上げていくのが経営幹部の仕事であり、完成したマニュアルに則ってルーティンワークをするのが店のスタッフの仕事です。

あなたの会社やお店は、ルーティンワークと判断業務の線引きができていますか?
正しくマニュアルが作成され、運用されていますか?

 

 

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう