お客様は、お金を使うときには少なからず「失敗したくない」という気持ちが働きます。そのため、外食や出前・宅配でも美味しい店、コストパフォーマンスのいい安心できる店を選ぶために、お客様は食べログやSNSの他のお客様の声を大いに参考にしています。
しかし、それはあくまでも他人様の声であって、人によって同じ商品・同じサービスでも評価が分かれますから、自分自身で確かめることが出来ればそれに越したことはありません。
このことを地でいくようなことが、宅配チェーンのコンサルティングに携わっていたときにありました。
FCチェーンのオーナーから「せっかくの大量注文がキャンセルになってしまいました」とFC本部に電話がありました。
理由を聞いてみると、予約をしたお客様が同じFCチェーンに加盟する他の店に注文したところ、「とても満足できるレベルの商品ではなかったから予約をキャンセルする」と言われたと怒り心頭でした。
詳しい事情を確認すると、予約をしたお客様は、お盆に実家に親戚一同が集まるので、夕食は寿司の出前を注文しようと決めていました。
実家に宅配してくれる寿司店をネットで調べて、美味しそうだし、予算的にも大丈夫だったので、このFCチェーンの店に予約をしてくれたのでした。
予約をした後に、自宅の近くの同じ店名のチェーン店からカラーメニューのポスティングがあったので、お客様は、どんな商品が届くのかを確認したくて、試しに一つだけ注文をすることにしました。
しかし・・・
約束の時間には遅れるし、お寿司も美味しくなく、お客様の期待を裏切る結果でした。この店の商品では、親戚の皆様に申し訳ないと思って、予約をキャンセルされてしまいました。
これはFCチェーンでの事例ですが、複数店舗を経営していなくてもこのようなことは起きているのですが、店が気付いていないことが多いのです。
お盆や正月、法事法要、グループの会合など人が集まるときには、確実に届けて欲しいために予約をするお客様が多いのですが、
その前に「試し取り」をして商品や配達時間、接客などを確認することが少なからずあります。
ピザなど70年台以降に外国から入ってきた商品は、そのときの味が基準になっているために全国どの店に頼んでも大きな差はありません。
しかし、和食や寿司など日本で長く親しまれてきた商品は、地域の文化や歴史も大きく影響するために、嗜好も各地域によってさまざまであり、全国一律というわけにはいきません。また、長年慣れ親しんできた味であるためにお客様の評価は厳しいのです。
お客様としては、多くの方が集まる席に出すものですから「あれは不味かったね」と言われたくはありません。「あー、美味しかった。どこに頼んだの?」と皆に言ってもらえるような商品なのかを確認するためにお客様は「試し取り」をします。
試しですから、既存のお客様ではなく、新規のお客様であり、1〜2個だけの少量の注文です。
そのため、繁忙期前の少量の注文は「試し取り」である可能性も高いのです。
「試し取り」でお客様が「美味しい」と思えば、予約につながっていきますし、「これではお客様に出せない」となれば予約は入りません。
味だけではなく、多くの人が集まる席ですから約束の時間を守ることも、大切なチェックポイントです。
新規の数量の少ない注文が、すべて「試し取り」とは限りませんが、このような注文が大量につながっていくことが多々あります。
繁忙期の前はもちろんのこと通常期にも、少量の注文であっても新規のお客様へは、既存のお客様以上に、基本を確実に励行していくことがお客様の安心を勝ち取っていきます。
あなたのお店ではどんなときでも、見ても美味しい商品を、約束の時間に、気持ちのよい接客で届けることを徹底していますか?