「店が山間部にあるので、商圏が広くとれません。それでも宅配をやれば売上は上がるものでしょうか?」と、ある社長からこんな相談を頂きました。
出前・宅配は商圏と売上に密接な関係がありますから、商圏が広ければそれだけ売上が多く見込めます。宅配専門チェーンでは8~10万世帯を越える商圏で商売をしている店も数多くあります。
一般的に商圏設定の目安といわれる片道15分で配達できる範囲で商圏を広く設定できるのは、首都圏、中京圏、近畿圏、福岡都市圏など主に大都市圏に集中しています。
それ以外のエリアで商圏内の世帯数を10万世帯以上確保できるのは、県庁所在地などそれぞれの地方の中核都市くらいです。
ただし、商圏が広く取れる地域であれば、必ず競合店がありますから、激しい競争を勝ち抜いていかなければなりません。
競争が激しいのならばそれに勝てばいいのですが、商圏が狭ければ対象となる世帯数、人口が少ないので、出前・宅配では商売にならないのではないかと思われることもあります。しかし、決してそんなことはありません。
現にコンサルティングをしてきた中には、1万5千~3万世帯の狭い商圏でも充分に売上と利益を伸ばした店が数多くあります。
ではなぜ商圏が狭くても、出前・宅配で業績を上げられるでしょうか?
ある店に初めて伺ったときのことですが、駅前にコンビニすらなく「これで商売できるの?」と疑問に思ったこともありました。それも、地理的には山や川などに阻まれて商圏を広げたくても広げられなかったのです。
ところが、2万世帯にも満たない狭い商圏であるが故に競合店が殆どありませんし、一定数の世帯数が確保できないので大手の宅配チェーンも出てきません。
また、長くその商圏で商売をしてきたので、比較的店名も知られています。
出前・宅配を行うときも、お客様が店名を知っているのは売上を伸ばすためには非常に有利に働きます。
この商圏では売上を大きく伸ばすことはできないにしても、今までの経験と社長の熱意から利益は確実に出ると判断して、出前・宅配の導入をスタートさせました。
出前・宅配で成功する大きなポイントの1つが、社長が「新しい事業として立ち上げる覚悟」です。これがあってこそ業績が伸びていきます。
次にポイントとなるのは、商圏内の客層に合わせた、店の魅力がお客様に伝わる出前・宅配用の商品の開発です。
品揃えは、店でも売れている商品群を出前用に改良し、冠婚葬祭用として新たに松花堂を追加して本格的に出前・宅配をはじめました。
さらに狭い商圏のよいところは、お客様とのコミュニケーションが取りやすいことです。
出前・宅配では、電話と配達時の2回、それも短時間でしか接することができませんが、商圏が少なければお客様との双方向のコミュニケーションが取りやすくなります。
配達時の会話やアンケート、ニュースレター等を使うことで、店とお客様の関係性がよくなり、リピーターも増えていきました。
その結果、冠婚葬祭用の松花堂も順調に売上を伸びていき、月商が300万円を越えることもありました。
この店は月商300万円を越えましたが、ここまで売上が伸びなくても店舗に出前・宅配を併設するのならば月商100万円でも充分に利益が出てきます。
そのため、商圏が狭い場合には、出前・宅配専業ではなく、店に併設することをおすすめしています。
とは言っても全ての店が上手くいくわけではありません。
出前・宅配で成功するポイントは、狭い商圏にあった商品と品揃えを作り、出前・宅配で売るシクミを作ることです。
商圏が狭くても大丈夫です。
あなたの店も、出前・宅配で売るシクミを作って、売上と利益を伸ばしませんか?