回転寿司の大手「かっぱ寿司」が期間限定で食べ放題キャンペーンをはじめたことが、ネットでもニュースでも大きく取り上げられています。
限定20店舗、平日14-17時の開催ですが、食べ放題の開始前から整理券を確保するために長蛇の列ができているようです。
かっぱ寿司は昨年の10月に、一部店舗でロゴマークを変更し、店内も改装して、北海道産のイクラなどの高級ネタも投入しました。
これが効を奏して、2016年10月の既存店ベースでの前年比104.1%と前年を上回りました。
ところが、11月以降は前年売上を下回ることが多く、2017年2~4月は前年売上を超えていますが、2016年の前年比が軒並み90%前半の数値であることから、売上が伸びたとは言えない状態が続いています。
また大型連休あった前年2016年5月の前年比は90.6%、そして今年の5月は91.9%と大きく前年を下回り、苦戦が続いていると言ってもいいでしょう。
有価証券報告書からも、2016年3月期には資産売却、リストラなどで最終損益が黒字になったものの、2013年3月期から2017年3月期までは各期に22~135億円の赤字を計上しています。
そんな状態の中で、即効性のある売上アップ作戦として考えられるのは、大幅な割引です。
しかし、一皿100円の寿司を10円値引きしたところで大した効果はありません。
やるのであれば、1皿75円以下にしないとインパクトに欠けてしまいます。
さすがに、これ以上の値下げをしてしまったら、売れば売るほど利益を圧迫することは明白です。
そこで、考えられたのが食べ放題でしょう。
お客様にとってもインパクトもあり、ニュースで取り上げられれば宣伝効果も期待できます。
それも繁忙時ではなく売上の落ち込む時間であるアイドルタイムの14-17時に設定したのは、非常によく練られていると思います。
さらに、食べ放題の価格設定も利益が出やすくなるように計算されているのです。
マルハニチロの調査では、男性は約11皿、女性は約9皿を回転寿司で食べると結果を発表しています。金額にすれば、男性1100円、女性900円です。
これに対して、食べ放題の価格は、男性1580円、女性1380円、シニア980円、小学生780円ですから、採算的には利益がでると「かっぱ寿司」では試算をしているのだと思います。
しかし、デメリットとして考えられることは、食べ放題に集まるお客様は、平均的な11皿ではなく、元を取るために16皿以上は食べる方が多くなることで、予想以上に利益が圧迫されることです。
次に、食べ放題を希望しないお客様や18時以降の営業に影響をする可能性があり、一般のお客様が「かっぱ寿司」に行くのを敬遠してしまう恐れもあります。
その上、食べ放題に来た客層はキャンペーン期間だけに来店するチェリーピッカー(いわゆるバーゲンハンター)が非常に多く、その後は殆ど来店せず、リピーターにはなり得ないことです。
今回は20店舗限定、期間限定で実施をしていますが、この結果がよく、売上も利益が伸びているとしたら、全店で食べ放題を行うことがあるでしょうか?
商品力のスシロー、ファミレス路線のくら寿司などの競合店との差別化を考えるとしたら、かっぱ寿司の強みを食べ放題として打ち出すことがあるかもしれません。
もし、全店で食べ放題をはじめたら、当初は集客ができるかも知れませんが、期間限定をなくした時点で、お客様の飽きが出てしまう可能性もあります。
そして、もっとも怖いのがお客様から見たストア・イメージがどうなるのか、ということです。
別の店の事例で、食べ放題ではありませんが、利益を削って大々的にキャンペーンをした結果、客数は増え、店は大わらわになったことがあります。
しかし、売上が伸びても利益が出ず、従業員が疲弊して退職してしまうという予期せぬ結果を招いたこともありました。
そして、キャンペーン終了後には大切な常連のお客様が去ってしまう事態にも見舞われたのです。
短期間に売上を上げるには、食べ放題や割引は効果がありますが、その後も売上・利益に貢献をするのかは疑問です。
売上・利益を確実に安定的に伸ばしていくためには、価格だけに走らず、お客様に支持される独自性を作っていくことが大切だと考えています。