東京オリンピックを2年後に控え、厚労省は医療施設や学校、飲食店などを原則禁煙とする健康増進法改正を提案していました。
ところが、自民党などの反対で頓挫しています。
厚労省の案では、飲食店での受動喫煙を防止するために「禁煙」を原則とし、喫煙をする場合は専用ルームの設置を要すると考えていました。
例外は、酒類の提供がメインの30平方メートル以下の小さなバーやスナックだけです。
ところが、自民党案では150平方メートル以下の飲食店にするとして大幅に喫煙できる店を増やしています。
150平方メートルの飲食店で、厨房面積を1/3とすると、フロア面積は100平方メートル、約30坪です。このフロア面積であれば、客席40~50の飲食店となり、ほとんどの店がこれに該当します。
これには、家族連れが訪れる店も含まれるため、子どもにまで悪影響が及びスタッフの受動喫煙も大きな問題となり、受動禁煙を防止することは不可能です。
自民党が受動喫煙に消極的な理由は、議員自身が喫煙者が多いこと、たばこ業界から6000万円以上の献金を受けているからという報道もあります。
もう1つ「禁煙にすれば、売上減少への懸念があって、飲食店が廃業に追い込まれかねないから」を理由にして反対をしています。
禁煙にすると本当に売上は下がるのでしょうか?
ランチタイムや土日などにファミリーレストランに行くと、
「禁煙席がただいま満席で、喫煙席ならすぐにご案内できます」と言われることが非常に多いのです。
こう言われるとお客様は諦めて別の店を探すか、禁煙席が空くまで待つことになります。
やっと座れた禁煙席には喫煙席から無遠慮にたばこの煙が侵入してくることもあって、形だけの分煙では、喫煙席にいるのと変わりがありません。
これでは折角の食事が美味しくありません。
こんな状況なら、全席禁煙にしたほうが売上は上がります。
「ファミリーで使う店ならわかるけれども、うちは中年の男性が中心の店だから無理」と反論されるかもしれません。確かに男性の喫煙率が高いのは30~40歳代で44%です。(厚生労働省国民健康栄養調査より)
お客様の中には「禁煙になったら、もう店には来ないね」と宣言をする方もいました。こんなことを言われると、どうしても禁煙にはしり込みをしてしまいます。
で、そんなことを言うお客様は何人くらいいますか?
数人が言ったことが気になって、他のお客様も煙草を吸うからきっと同じように思っているだろう、そんなことを考えてしまうと禁煙にすることはできません。
人間は、保守的ですから、現状が続くことが最も安心できるからです。
もしも、新しいことをしてうまく行かなかったらどうしよう、そんな不安が付きまとい、禁煙にすることを踏みとどまってしまいます。
しかし、今まで飲食店のコンサルティングの経験(出前・宅配がメインですが、飲食店のコンサルもしています)からすれば、禁煙または完全分煙した飲食店の売上は下がるどころか上がっています。
もちろんすべての飲食店がそうだとは言いませんが、コンサルティングをさせていただいた店では売上が上がったのは事実です。
禁煙にした店では、「〇月〇日より禁煙にします」と告知期間を設けていました。
それでもお客様は店に来てくださり、
愛煙家のお客様は「このご時世では仕方ないよね」と苦笑いをしていました。
他の店では、一時的に離れていったお客様がいたために売上が下がったこともあります。
そのかわりに禁煙にしたおかげで、新しいお客様も増え客層が変わりました。
そして、客層に合わせたメニュー作りをしたことで、客単価もあがり、売上も上がっていったのです。
私も約20年前まで1日2箱を吸っていたヘビースモーカーでしたが、その時でさえ食事中の他人の煙草の煙はとっても嫌でした。
食事を美味しく召し上がっていただきには、香りがとても大切です。
美味しい香りを邪魔し、健康に害を及ぼす煙草を店で吸わせないようにする(もしくは完全分煙にする)のも、愛される飲食店、おいしい飲食店の条件だと考えています。
出前宅配では、禁煙は関係なさそうですが、大いに関係があります。
それはお客様ではなく、スタッフの問題です。
車で商品を配達するときに、車内で煙草を吸ったら商品にも煙草の匂いがついてしまい美味しさは半減します。配達車両内は当たり前のように禁煙です。
デリバリースタッフがお客様にお届けする前に一服していても体には煙草の匂いがついてしまいます。短い時間では煙草の匂いは消えませんから、商品を渡す時にお客様が煙草の匂いを感じてしまてもいい気持ちはしません。
煙草を吸っているときには気づかないものですが、煙草をやめると煙草の匂いは敏感になります。喫煙マナー教育も安全運転教育とともに必要です。