税理士から届いた月次報告書を見ながら社長は首をかしげていました。
「原価率が1.8%上がっている、仕入原価が上がっているからなのか?」と。
売上が500万円/月ならば、原価率が1.9%上がると利益が約10万円吹っ飛んだことになります。
これが1年続けば120万円の利益が消えてなくなります。
販売価格はなかなか値上げできないのに、仕入原価が上がっていることが影響をしていることも確かでしょう。しかし、それだけではないことも多いのです。
粗利益を増やすには、仕入れる材料の原価を下げなくても、取引業者を変えなくても、メニューの変更をしなくてもいいんです。
もっと簡単な方法があります。
それは、正確な商品別売上高と粗利益高(率)を出すことです。
本来の目的は、現状把握の一環として、コンサルティングの第1回目でやってもらっていました。
これが粗利益を増やすことに貢献をしました。
具体的には何をするかというと、商品別の標準原価表と実際の商品の原価を計算して、その差を見ていただいていたのです。
通常、飲食店では、商品ごとにレシピが決められています。
そのレシピに従って商品を作って行くわけです。
ところが、出来上がった商品がレシピ通りになっているのかを調べてみると、規定より食材の量を使っていることも珍しくはありません。
職人さんはお客様に美味しく召し上がって欲しいと思うために、レシピよりも食材を多めに使ってしまうことがあります。
そのため、予定している原価率よりも高くなってしまうのです。
それが顕著に表れるのが和食や寿司です。
あるお店では、お客様に人気のある原価が高いマグロを、職人さんがレシピよりも1g多く切りつけていました。
その理由は、職人さんには手になじんだ感覚があり、無意識のうちに大きめに切りつけていたからでした。
たったこれだけでことですが、全体の原価率が2%ほど上がってしまったのです。
たった1gのことが、原価率を上げ、粗利益を120万円減らしてしまいました。
規定よりもちょっと食材の分量をしたこと増やしただけで、本来得られるべき利益が出なくなってしまいます。
レシピ通りに作るという当たり前のことを継続していくことは、簡単なようで簡単ではありません。
そのためには、レシピ通りに作ることがどれだけ利益に影響をするのかを、職人さんを始め、社員、スタッフにも教育することはとても大切です。
「原価率が上がったな?」と感じたら、使っている食材や仕入れ先を見直す前に、メニューの変更を考える前に、レシピ通りに商品が作られているのかを今一度確認してみてはいかがでしょうか?
それだけで、粗利益は簡単に増えていきます。