「店の中の雰囲気がいいときに、新しいスタッフを採用したいんです」と社長はいつもおっしゃっています。
というのも、この会社が運営する店は、先輩のスタッフが後輩を指導していて、活気に満ち溢れているからです。
インストアのメイク担当ならば、電話の受け方から調理から盛りつけまで、
デリバリーならば、バイクの運転やお客様への接客、そしてポスティングの方法を先輩スタッフが後輩に教えています。
そして、この店が上手くいっているエピソードを、社長がうれしそうに話してくれました。
デリバリーで新しく入ったスタッフは、身長が182cm、体重も90kg越える巨漢で、いるだけでも圧迫感があるのに、無表情でいると威圧感さえ感じてしまうほどでした。
そのためか、お客様アンケートには「礼儀正しいけれども、なんとなく怖い感じがした」というような意味のことが書かれていたのです。
それを見た先輩スタッフは、この巨漢のデリバリースタッフがどんな接客をしているのかを確認するために同行してみることにしました。
接客としてはロールプレイで訓練した通りにはできていたのですが、慣れていないこともあって、お客様の前では緊張してしまって表情がこわばっています。
いるだけで威圧感があるのに、表情まで硬くなってしまえば、お客様に「怖い」と思われるのは仕方ないことだろうと先輩は思いました。
先輩はお客様には「すいません。新人で慣れていないものですから、緊張してしまっているので、どうぞ長い目で見てやってください」とフォローした後、店に帰ってから、表情を柔らかくするためのちょっとした運動を後輩に教えました。
その後もデリバリーに行く前には、必ず表情を柔らかくする運動を続けています。
その甲斐あって「配達の方の感じがとてもいい」と書かれたアンケートを先輩がみつけたときに、後輩に一言「やるじゃん」と声を掛けていました。
この先輩の指導の素晴らしいところは、後輩が一生懸命にやっているのに成果が上がっていないことに対しては決して叱らなかったことです。
もしも、ここで怒ったりすれば、後輩は「一生懸命にやっているのに、なぜ怒られなきゃ行けないんだ」と思ってやる気をなくすだけです。
悪いところを指摘するのではなく、どうしたらいいかを具体的に指導しているから、後輩も素直にアドバイスが聞けたのです。
そして、お客様からの評価がよくなった時には、ちゃんと後輩を評価していることがこの先輩の素晴らしいところです。
これで、お互いの信頼関係が一層強固なものになります。
新人だった後輩も成長すれば、新人を指導する立場になります。
巨漢のスタッフにも、後輩ができて指導に当たるようになり、自分が先輩にしてもらったことをそのまま後輩に伝えています。
こうして、この店のよき風土は脈々と続いていきます。
このシクミが出来上がったのは、社長自身が同じような方法でスタッフを教育してきたからです。
社長から直接指導を受けたスタッフの能力も高かったこともありますが、そのスタッフが後輩に指導をし、その後輩がそのまた後輩へと、とてもいい循環で店が回り始めました。
いいシクミが続くと、それが会社や店のよき風土になります。
よき風土を作り上げるには時間はかかりますが、だからこそ他店がマネすることができない強力な強みが出来上がるのです。そして、人が伸びれば、業績も伸びていきます。
あなたの店では、人の伸ばすシクミはできていますか?