求人難といわれながら、この一年間全く求人広告を出さない店があります。
やっているのは、店頭の求人ポスターだけです。
それでも、必要なスタッフは確保できています。
ある日、店頭の看板を見て、一人の学生が面接にやってきました。
店主が履歴書を見ていると、気になることがあります。
「もしかして、お父さんの名前は○○さん?」と学生に聞いてみると
「はい、そうです」と即答でした。
これには店主もビックリ。
それは、面接に来た学生の父親も、20年前にこの店でデリバリーのアルバイトをしていたからです。
もちろん父親も「あの店なら、大丈夫」とアルバイトすることを認めています。
「こんな偶然があるもんですね」と店主はうれしそうに話してくれました。
これまで、スタッフを大切にして営業をしてきたから、こんな素晴らしいことが起きたのです。
この店の素晴らしいところは、仕事では、スタッフの話に耳を傾けて、コミュニケーションをとっています。
その上で、各スタッフの良い点を認めて、叱るところは理由を説明してから叱ります。アルバイトでも、信頼をして、任せるところは任せて、能力を伸ばしているのです。
仕事だけでなく、それ以外でもコミュニケーションを図っています。
正月商戦、夏の商戦が終わった後には、必ずレクレーションの企画を立てて楽しんでいます。飲み会や食事会も定期的にやっています。
この店の特長は、現役のスタッフはもちろんのこと、退職したスタッフもレクリエーションなどに参加しているのです。
仕事を離れてしまえば、みんな気のいい仲間です。
仕事では知り得ない仲間の新たな面を見ることもでき、いつも多くの参加者がいます。
店主のポリシーは、店を辞めてしまえば、「はい、さようなら」ではありません。
アルバイトをしてくれている人達の多くは店の近くに住んでいます。
せっかくの縁を、辞めた途端に終わらせたくないとの考えです。
そのためか、結婚して子どもが生まれたときには、店に子ども連れてきてくれることも当たり前のようにあります。
いったん店を辞めて、別の仕事に就いていても、多忙を極める商戦期には、応援スタッフとして働いてくれるのです。
これには、店主の人間性が良いことも関係しています。
飲食というとブラックのイメージがつきまといますが、決してブラックではありません。
その証拠に、アルバイトの人達の勤務年数が長いのです。
高校生から始めれば、大学を卒業するまで5~6年間続ける人もいます。
主婦の方、退職後のシニアの方も、長く続ける方ばかりです。
求人が難しい時代、採用が出来てもすぐに辞めてしまうようでは、何もなりません。
長く勤められる環境を作ることこそが、いい人材が確保できる方法です。
そんな店だからこそ、紹介があり、不思議な縁で採用ができています。