「先入観は、可能を不可能にする」
これは、大リーグでも二刀流で活躍する大谷翔平選手が高校時代に野球部の監督に教えてもらった言葉だそうです。
もしも、プロ野球で二刀流は不可能だと決めつけていたら、彼が大リーグでこれほど活躍することはなかったでしょう。
そう考えると、言葉の持つ力は非常に大きいと思います。
これと同じように、思い込みも可能を不可能にしてしまいます。
商売でも、思い込みが売上・利益の伸びを抑えてしまっていることがありました。
ある飲食店が出前・宅配を強化しようとしたときのことです。
今までに扱ったことのない高価格帯の商品の提案をしたところ
即座に「こんな高い商品は、出前・宅配では売れないですよ」と言われました。
その理由を聞いてみると
「今まで売れていた商品は、もっともっと安い商品ばかりで、今までの2倍以上する商品なんか売れる訳がないでしょう」との答えが返ってきました。
「いままでの延長線で考えれば、それなりの結果しか出なくなります。これだけの商品ならばこの価格でも充分に価値観はあります。お客様もわかってくれます」
といっても、社長はなかなか頭を縦には振ってくれません。
この店の出前・宅配はこれまで低単価の商品で勝負をしてきました。
今以上に売上を伸ばすためには、客層を広げる、それも高単価でも注文をしてくれる「いいお客様」を増やす必要があると私は考えていました。
また、それだけの価値ある商品を作ることが出来たので、高単価の商品を提案したのです。
しかし、この店の社長は過去の商売経験から染みついた考えである「高いものは売れない」という先入観、思い込みから抜け出せずにいました。
誰もが過去の経験から先入観、思い込みを持っているので、それが良い悪いということではなく、一度リセットすればいいだけです。
先入観、思い込みをリセットするためには、それを可能にするだけの成功事例が必要です。
そこで、様々な売り方の提案をして、他店の状況も説明しながら、やっと品揃えの一部に加えてもらうことが出来ました。
果たして、この高価格帯商品は売れたのでしょうか?
導入してから3ヶ月ほどは、売上は今ひとつでした。
社長は「やっぱり、うちの店では厳しいですかね。この商品は」とぽつりと一言。
ところが、4ヶ月目からは、売上は上昇カーブを描いていき、定番商品へと育っていきました。
お客様が出前・宅配を注文するサイクルを考えれば、新商品の、それも価格の高い商品の売上が伸びるまでに3ヶ月はかかります。これも想定内です。
さらに良いことに、この商品に引っ張られるように、商品単価が上がっていったのです。もちろん、売上も利益も客数も伸びました。
社長は「過去の経験から安い商品しか売れないと思っていましたが、こんなに高い商品が売れるとは思ってもみませんでした。まさに目からウロコです」と笑顔でした。
先入観、思い込みを疑ってみると、売上も利益も伸びる可能性が充分にあります。