「ブランドなんてとんでもない!」とおっしゃりながらも、しっかりとブランド作りをしている店があります。
ブランドと言えば、ルイヴィトンやエルメル、ロレックスなどを思い浮かべることが多いのでしょう。この社長もそう考えていました。
ブランドというと、全国で名が通っていて、誰もが良さを知っている会社や商品・サービスのことを指すと思いがちです。でも、大上段に構える必要はありません。
語弊を恐れずに言えば、ブランドは社長や店の思いを叶えるための道具なのです。
その思いは店ごとに違って当然ですが、自店の商圏内のお客様が「○○なら、あの店」「○○なときは、あの店」と思い浮かべてくれるようになれば、店のブランド化がほぼ成功したといってもいいでしょう。
飲食店がブランドを作っていくためには商品の美味しさは欠かせません。美味しい商品は必要最低条件です。
でも、美味しいだけではブランドにはなりません。
お客様が、食べて、見て、触って、従業員と話して、感じたこと全てが店のイメージ決めていきます。
そして、店のイメージが良くなって他店との差別化ができてしまえば、ブランドになります。
ただ、せっかく社長が店のよいイメージを作りあげて、ブランド化しようと考えていても、スタッフが社長の思いを理解していなければ成し遂げることはできません。
スタッフの接客が悪かったために、社長が思い描いてきたことをぶち壊すこともあります。
それを避けるためにも、スタッフに社長の思いを伝えて、教育をしていたのですが、浸透させるのは簡単ではありません。
そこで、もっと早くスタッフに思いを伝えるために、社長は一計を案じました。
スタッフを教育するために、まずお客様に社長の思いを訴えかけたのです。
HPやメニュー、出前用のチラシなど、お客様の目に触れるありとあらゆるツールに、社長の思いを言葉にして載せました。
まずはお客様に社長の思いを伝えてしまうことで、やらなければならない状況を作りあげたのでした。
ツールを見たスタッフは「メニューに書いてある以上、やんないとまずいよな」といい緊張感が生まれたのです。
上司に褒められるよりもお客様に褒められることをよろこぶスタッフは大勢います。お客様にはいい顔をしたいと思っているスタッフもいますから、この作戦は大当たりです。
おかげで、接客の勉強会での真剣度も増し、お客様にお勧めの料理もスムーズに進められるようになり、スタッフとお客様にはよい関係性ができました。
ブランド化のためには、伝えるべきことを正しく伝えていくことが必要です。
それは、お客様だけではなく、スタッフも同じことです。
店で働くスタッフ全員がお客様に伝えたことを正しく実行してはじめて、ブランドとして認知をされます。
この店は、売上も客数も増えていますが、社長は未だにブランド作りをしてきたとは思ってはいません。
自分の思いがすこしずつ形になっていくのを楽しんでいます。